山岳ガイド ミキヤツ登山教室が紹介する、現場からの登山装備、技術論 

 アイゼンワーク 山岳ガイド・ミキヤツweb登山教室      
 

山岳ガイド・ミキヤツ登山教室 久野弘龍・加藤美樹
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ガイドブックや多くの講習会などで言われてきたアイゼンワークの多くは現場では通用しにくい机上の空論になっているか、説明不足です。
道具としてのアイゼンの特性を活かし、体に無理をさせない動きで雪山を行動するのが「正しいアイゼンワーク」


 実際のアイゼンワーク

 先ページで説明したように、アイゼンワークはアイゼンという道具を使いつつ、それであっても効率の良い体の動かし方を実現することが求められます。
 これによって、雪上、表情、傾斜、トレースの有無にかわからず行動することが可能になります。

 アイゼンを効かせつつ、効率の良い動きをするために、傾斜や雪質に応じてアイゼンの使い方が工夫され、アイゼンワークが成り立っています。
 
 私たちが赤岳登頂と初級雪山講習で行っているアイゼン講習の内容を紹介しながら、実際のアイゼンワークを見てみましょう。



 フロントポインティング 
 急傾斜、複雑な地形、絶対落ちられない場所、怖い時に使うべき技術

 従来のキックステップと呼ばれる技術ですが、実際にはキックすることなくアイゼンの前爪(フロントポイント)を載せたり、キックする目的が斜面を削る場合もあるため、前爪を積極的に使用することから「フロントポインティング」とした方が理解しやすいと思います。
 アイゼンワークの中で最も重要な技術で、雪山に入る方は必ず身に着けているべきです。


 
「爪を刺している」と考えるのではなく、開けた穴に立っていると考えることが重要です。




 フロントポインティングは以下の理屈から成立している技術です。

・前爪二本によるステッピング(ステップを作ること)で、小さな階段を作ることができる

・足を水平に保ちやすいため、足場さえ作ることが出来れば、そこへの移動が容易

・足裏の重心点を爪先、もしくは爪先に近い前方に常にあるため、動きやすい
 

 「複雑な地形などで足場が限られる時」や「大きな上方へのステップ(歩幅)で移動しないと行けない時」に有利です。
 前爪2本を蹴りこむことで、小さなステップかもしれませんが、足を載せるべきを作ることができます。モチロン雪が柔らかければ足裏がしっかりと乗るステップを作ることも可能です。
 前爪が刺さらないような岩でも、爪を掛けられるだけの段差があればそれらを使って行動することができます。


 重心を左右の足に交互に移動させることがポイントです。(この場合、右足に重心を移動させてから(させながら)立ち上がる)


 ・穴を空けて、それをステップにして立つ
 ・重心は靴の外、ステップにのった爪の位置
 ・蹴り込む時は踵を下げて(斜面から膝を離すと踵が下がる)爪を上に向けて蹴る
 ・乗り込む時は足を水平にして乗り込む(前爪が再び下を向くため、ステップから外れにくくなる)

 <注意点>
 ・急傾斜の時、斜面に膝が近づきすぎると踵が上がって爪が下を向いてしまいステップを壊す可能性がある
 ・しっかりと(一本の)軸足に立って、確実にステップを作ってから足(前爪)を置き、それから重心を移動して立ち上がる。



 フラットフッティング 
 緩傾斜、単調な斜面で行う技術

 緩傾斜や単調な斜面では、足裏全体の爪を全部使うフラットフッティングが有効です。
 しかし、実際の現場では単純なフラットフッティングではなく、山側の爪を使って少し削ってからフラットフッティングをすることになります。これ以降のスリーオクロック系の技術でも、足裏全体で斜面に立つときにはこのステッピングと併用したフラットフッティングをすることになります。


 フラットフッティングは以下の理屈から成立している技術です。

・足裏全体の爪を効かせることで、摩擦を増やすことができる

・爪先を外に開く(横に向ける)ことで、つま先とかかとの高低差を無くすことができ、前に出した足に乗り込みやすくなる

・足を外に振り出す様に山側列の爪から着地させると、斜面を削ることができ傾斜が緩くなる(山側の爪が深く、谷側の爪が浅く刺さる)


 ・爪先を外に広げて足を出す(乗り込みやすくするため)
 ・山側の爪が深く刺さり、谷側の爪が浅く刺さった状態をつくることで、足を置く傾斜を緩くする
     ・・・山側の爪(2〜6番目)だけで斜面を削る
     ・・・爪先を上げ気味にし、2〜6番目の爪が斜面に同時に当たるような左右の足幅で足を蹴り出す
     ・・・斜面を削った後に足を載せるという作業を、一つの動きで行う。
 ・足を置いたら進行方向ではなく、その爪先方向に身体を移動させる
     ・・・身体の回転によって重心が移動するため、最小限の力で移動する(登ること)ができる

 <注意点>
 山側の爪で斜面を削ったら、谷側の列の爪も必ず着地させること。これをしないと片効きになり、不安定になる


※フラットフッティングは前爪が積極的に使える今のアイゼンではそれほど重要な技術ではありません。むしろ、それが通用する状況では雪山登山ではなく、雪山トレッキングだと言えます。
フラットフッティングは傾斜が緩いか、トレースがある時にしか使えない技術です。
もし、あなたが本格的に雪山を登っていくことを考えているのであれば、フロントポインティング、スリーオクロックをしっかりと身に着けなければなりません。



 スリーオクロック 
 30度〜40度程度の傾斜で行う技術。実際の雪山(トレースが無い)では最重要。

 トレースのある雪山しか登ったことのない方は必要性を感じないかもしれませんが、実際の雪山ではこの技術が雪山登山の最も使用頻度が高くなります。
 スリーオクロック、時計の針で12と3の位置で片足はフロントポインティング、もう片方はフラットフッティングでアイゼンを使います。 
 これによって安定と省力化を図り、そのアイゼンの使い方を実現するために斜面に対し体を横に向けることから、効率の良い体の使い方が実現できます。
 ※逆向きも当然ありで、ナインオクロックになります

 ・スリーオクロック(ナインオクロック)
  

 スリーオクロックは以下の理屈から成立しています。

・片足はフラットフッティングで疲れないことを狙い、しかも体が横を向いているので比較的傾斜が強くても容易です。

・もう片方の足はフロントポインティングで効率よく高度を稼ぐ(高い位置に乗り込める)とともに、安定、安全を図ります。

・体を斜面に対し横に向けることで、膝以外の強い筋肉も使うことができるようになります。

・斜面に対し体が横を向いているので、ピッケルを体軸付近で斜面に突きやすく、急傾斜でもバランスを取りやすくなります。


 ・フラットフッティングする足の方に体を向けて斜面に対し横を向く
 ・もう片方の足はフロントポインティングで高度を稼ぐ
 ・ピッケルでバランスを取りながら登る



 <注意点>

 体が横を向いていることで成り立っている技術です。斜面に対し体を横に向けるようにして歩きましょう。
 スリーオクロックを行うべき斜面でフラットフッティングで正面を向いて登ると、とても不安定になります。
 フロントポインティングする足は、踵を雪面につけない! 



 変形スリーオクロック 
 現実的なスリーオクロック

 スリーオクロックという技術を、実際の雪山で行う場合、少し変形させた方が安全度を落とすことなく楽になる事があります。
 
 スリーオクロックを正確に行うと、それでもやはりフロントポインティングする脚が疲れてしまいます。
 斜面が比較的安定した雪面で、傾斜もそれほど強くない(30度程度)のであれば、このフロントポインティングを地面に向かって行うとかなり楽になります。
 これを行なうためには、斜面に対し完全に横を向く、もしくは少し下を向いてしまうぐらいまで横を向いてしまうと可能になります。
 体がより横を向いてしまうので、つま先の方向も写真のように変えてしまいます。


 ・フロントポインティングは正面ではなく2時の方向へ、フラットフッティングは4時の方向へ爪先を向けて行うことになります。
 ・身体はスリーオクロックよりも更に横向き、場合によっては少し下を向くぐらい
 ・フロントポインティングは爪先を地面に向かってけるようにします。これによって、フロントポインティングした足が体の下に入りやすく、体を持ち上げる動作の効率が良くなります。また、「ふくらはぎ」の負担を減らすこともできます。
 ・フラットフッティングする足は、足を交差させるように、フロントポインティングしている足のすぐ上に持ってきます。つまり、一本の軸を歩くように歩みを進めます。
 ・これらの動きで、ふくらはぎが疲れず、一本の軸で歩くため効率の良い動きが実現できます。

 <注意点>
 かなり上級テクニックです。
 詳しくは私たちの行う講習に参加していただくか、・・・・遠くで観てください。


 また、スリーオクロック的な動きは、両足ともステップを作りながら歩く方法にも変形することがあります。
 下の写真はどちらの足もフォールラインに対し横を向いていますが、これによってステップを削りながら歩くことが可能になります。
 しかも体の下に既に足が入っているため、容易に体を押し上げることが可能です。



 このように、スリーオクロック系の技術は、体の下に足が入っていることが大きな特徴であり、メリットとなります。
 スリーオクロック系の技術は、体を横にして登る事で生じるメリットを利用する技術です。



 トラバース   
 雪山の歩行中、最も難しいテクニックが必要でミスをしやすい

 最も簡単なのはフロントポインティングで横移動

 トラバースに限らず、登りも下りも。
 あるいは雪、氷、岩が混じって歩きにくかったり、傾斜が強くて怖かったり、そして、ぜったい落ちたくないような状況ではフロントポインティングで行動します。
 そう考えると、雪山で最も最初に身に着けるべき技術がこのフロントポインティングです。





 フラットFでのトラバース 山足は進行方向、谷足は下方へ向けてフラットフッティング
 
 ※山足が片効きしやすいので注意 → 山足は足の位置よりも膝が谷側に落ちるように
 ※硬い斜面の場合、山足、谷足共に下方を向けてしまうと楽
 ・・・強い横風を受ける時にも同様の歩き方をする
 ※柔らかい場合山足は進行方向に向けてステッピング(削る)、谷足は下方に向けてフラットF(踏み込みによってステップを作るか、ふらとフッティングをするか、あるいは削る)
  


トラバース中は常に斜面の下(写真の場合左下)に引かれる力が働いています。
このため、谷側の足は爪先を下に向けることで落とされる力に対応しないといけません。

しかし、雪が柔らかい時にフラットフッティングをしてしまうと、雪と一緒にスリップしてしまいます。
そのため、もしステップを作る事ができるなら、必ずステップを作ってからフラットフッティングをしなくてはなりません。

 
 実際のフラットフッティングでのトラバース
 
 山側の足は進行方向に爪先を向けてフラットフッティングをすることで進み、谷側の足はフォールライン、つまり、滑落した時に落ちる方向に向けてフラットフッティングをすることで安全を確保します。
 このように左右の足はそれぞれ別の役割のために働いていると考えることが必要です。
 この歩行を行う時、難しいのは山側の足で、写真左では左足の上に重心があることが解ります。その上でフラットフッティングを可能にするためには膝が内側に入る必要があります。
 また、右の写真は左右の足が一本のライン上を歩いていることが解ります。これによって上体は左右に揺れることなく歩くことが可能になり、かつ、滑落方向に重心を移動させるような危険な状態を避けることができます。
 これは難しい技術です。
 滑落の多くはトラバース中に起きていることが多く、これができないことが原因でしょう。
 

 写真の場合、山側(左足)の膝が外に向いていることが解ります。このため足裏全体どころか爪すら斜面をとらえることができません。結果は下の写真の様に雪面を捉える事ができず、空振りしてしまいます。



アイゼンの爪は左右二列ありますが、同時に効かせる意識が必要です。
上の写真では片方の爪だけを雪面に掛けようとする、アイゼンの片効きの状態になっています。

これを直すには下の写真の様に、つま先を斜面の下に向けてしまうと、フラットフッティングしやすくなります。



 いずれにせよ、トラバース中は雪面が柔らかい時には可能な限り削ってステップを作りながら歩きますが、硬い斜面の場合はフラットフッティングになります。
 雪面を削るには爪先がフォールラインに対し横を向く必要があり、フラットフッティングするには爪先がフォールラインに向かなくてはなりません。
 だからアイゼンを付けて歩く際は、斜面を観察し、自分がどの技術を駆使して歩くのか、しっかりと意識をしながら歩くことが必要です。



 斜面を降りる    
 降りとは、足を下ろすのではなく、腰を降ろした結果、足が着地する 。
 このためには、前向きに下ることは現実的でなく、横向き、後ろ向きを積極的に使う

・後ろ向き(フロントポインティング)での下降のメリットとデメリット
 ・・・手(ピッケル)を積極的に使えることがメリットで、進行方向(下方)が見えにくいことがデメリット
 ・・・降りやすいわけではない!
 ・・・ピッケルや手が補助になることと、ミスした時に手で支えられる可能性がある

・前向きのメリットとデメリット
 ・・・進行方向を見やすいことと、フラットフッティングしやすいことがメリット
 
 あとはデメリットが多すぎる
 ・・・膝への負担が大きい
 ・・・初期制動(ピッケルストップ)を行いにくい
    (前向きに降りると、ピッケルが体の横にあり、スリップしたときにピッケルを刺しても体を支えることが出ません)
 ・・・怖い
 ・・・アイゼンを引っかけやすくなる(踵の爪が引っかかる)


・横向き(斜め向き)のメリットとデメリット 
 ・・・手を使いやすい
 ・・・進行歩行を見やすい
 ・・・フラットフッティングしやすい(硬い斜面が出てきても対応できる)

 上述のように、後ろ向きと前向きのメリットを享受できる以外にも多くのメリットがあります
 ・・・斜面を削ってステップを作りやすい(フォールラインに対し爪先が横を向いているため)
 ・・・初期制動(スリップした瞬間にピッケルで止める動作)が確実にできる
 ・・・怖くない
 ・・・膝への負担が少なくなる(膝周りの筋肉よりもお尻の筋肉を使える)
 ・・・膝への負担が少なくなる(骨盤を傾けやすくなるため、膝を曲げる角度が小さくなる)



 実際の斜面の降り方
・身体を斜め横へ向けて、谷足が少し下、山足が少し横を向けて降りる



 上の写真、ひもを使って、下に引っ張っています。
 下りでは斜面を落ちる力が働いているため、同じような状況にあると言えます。
 この様な状況(斜面の下り)では、写真の様に少し体を横に向けて、つま先も斜めに向けることで、落とされる力に対処しやすくなります。


 しかも、体が横を向いているため、斜面に手が近づくため(写真の左手)、もしピッケルを持っていればバランスを取りやすくなるだけでなく、スリップした瞬間い止める、初期制動の可能性も高くなります。
 更に、斜面(フォールライン)対し足が横を向いているため、ステップを作りながら下降することができることも大きな利点です。 

 
 動きの流れと注意点

・山足(左足)と谷足(右足))は肩幅程度広げる。
 左足(山足)と右足〈谷足〉は、それぞれ、並行したライン上に着地することになります。

・山足に一度完全に身体を乗せます。



山足一本で体を支えた状態から静かに腰を下ろし、谷足(右足)を身体の後方に着地させます。


 この時、足を着地させる意識ではなく、腰を落とした結果、足が着地するようにします。こうすることで重心を上の足に残したまま足を下に降ろすことができます。
 これなら足がスリップしそうでも、軸足である左足にまだ重心が残っているため、スリップに繋がりません。
 もちろん、この状態であれば、必要に応じて下に出した足でステップを作ったり、足を置きなおしたり、場所を替えたりすることができ、安全に降りることができます。


 足がスリップせず、安全であることを確認してからしっかりと荷重して、一本の足でしっかりと体を支える。



 谷足(右足)でしっかりと体を支えられることが分かっているため、次の足を自信をもって出すことができます。
 しかし山足は、谷側の足よりも先行しないようにしなくてはなりません。

 つねに、谷側の足を先行させることで、確実にアイゼンを効かせながら降りることができます。


 写真ではわかりずらいですが、山側の足を他の側の足よりも下に出してしまうと、足の裏が雪面に向かなくなります。つまり、アイゼンの爪が雪面を捉える事ができず、アイゼンの片効きや、アイゼンが空を切るなど、スリップの原因となってしまいます。



 更に、山側の足(右足)も重心が爪先方向に寄っているのが分かるでしょうか。
 山側の足を下に降ろし過ぎると、体が下に落ちやすくなり、軸足でそれを支えることが難しくなります。
 こうなると、もし左足のアイゼンが効かなかった場合は即滑落に繋がります。
 また体が下に進んで行ってしまうのを力で対処しようとすれば、右膝はかなりの負担を強いられ、長い距離を降りることは出来ず、いつか破綻をきたすか、膝を壊す原因となります。

※じっさい、登山中のひざの故障はこれが原因です。



 下降を斜め向きで降りるこの流れによって、前向きでは決してできない確実なアイゼンワークと膝の負担の軽減、更にピッケルによる支持や初期制動の可能性を手に入れることができます。


★体の向きを変える必要性
・身体の後方へ谷足を出すことで膝の負担を少なくし、山足を先行させないことで疲れず、安全にな
・必要であれば一歩ごと向きを変える(←いちど正しく着地してから両足ともにすこしずつ向きを変える)

※フラットフッティングで前を向いて下降するというのは、今の道具を使用している場合、机上の空論です。
前爪が無い時代に急斜面を下降するためにはフラットフッティングしかありませんでした。硬い雪や氷の斜面で滑らないように、全ての爪を効かせるしか方法が無かったため、前向きにならざるを得なかったのです。つまり、前向きになれば爪先を雪面に向けやすくなり、、全ての爪を斜面に効かすことになるのです。
しかし、今のアイゼンでは前爪を使ってのフロントポインティングでの下降や、より強度のあるアイゼンの爪を駆使して斜面を削る事の方が安全、確実であり、フラットフッティングよりもより重要な技術です。
また、柔らかい雪では爪先を下に向けたフラットフッティングでは、爪を効かせている雪面がズレ易いため、不安定になりがちです。
※しかし、硬い雪、硬い氷でも、前向きにおりやすい緩い傾斜であれば、下向きのフラットフッティングが必要となります。


踵のキックステップは危険!

 ※ガイドブックには下降の方法として「かかと」でキックステップをしながら歩く方法が紹介されていますが、これはあまりお勧めしません。

 かかとのキックステップでは上から踏み込むだけではステップができない場合が多々あり、また、そのステップも必ずしも水平でないため、そこに滑ることなく立つには、高度なバランスが要求されます。
 また、ステップを作るための踏み込みと、重心の移動が同時に行われるため、仮に硬い雪でステップができなかった時や、思っていたほど大きなステップができなかった時には即滑落に繋がります。
 ステップを作りながら、しかもかかとで立つには、すこし後傾しないと、それは不可能であり、こういった点からもミスに繋がりやすくなります。

 
 多くの場合上の写真のように後傾になってしまい、足を出してもその足にしっかりと重心を移動することが困難になります。そうなれば尻餅をつきやすくなり、当然滑落の危険も大きくなります。


 さらに、まっすぐ下を見て下降することは、かなり怖いことであり、多くの場合腰が引けてしまいます。そして、このかかとで下降する方法は、ある程度腰を引かないとバランスを取れない歩行方法であり、そういう意味ではミスを起こしやすいといえます。
 まだ理由はあって、かかとで下降すると、足首の関節、さらには指の関節をほとんど利用できないため、とてもバランスを崩しやすくなります。これは爪先をあげてかかとだけで歩いてみると、そのバランスの悪さが実感できると思います。

 まだまだ、理由は続きます。
 まっすぐ下を見ていると、手は体の横にあり、手、そしてピッケルは斜面の近くにないため、とっさにそれを使用することができないばかりか、それを積極的に突きながら歩くことができません。
 以上の理由によって、かかとでのキックステップの下降には反対です。
 仮にこれを「教科書に載っているから」というだけの理由で行っているとすれば、それはかなり危険な行為なので、一度考え直してください。
 私達は横向きで下りることをお勧めします。
 その上でかかとと足裏の斜面側半分でステップを作ることをお勧めします。そうすれば上述の危険はかなり防ぐことができます。

 

 先の2枚の写真に比べて、体がこちらを向いています。そのため左足はサイド(小指側)のエッジを使ってステップを作ることになり、重心が左足の上にスムーズに移動します。


アイゼンの引っ掛け 

・アイゼンを引っかけるのは踵内側の爪を自分の足や靴に引っかける
・トラバース時は谷側の足を回して、谷側の足は慎重に前に出す
・下降時は左向き、もしくは右向きで爪先、踵、爪先、踵の順番に並べる
・「引っかけないように足を離して」歩いても、恐怖や意識の低下で必ず左右の足は近づくので限界がある
 ・・・人間は怖い時には状態が揺れないように一本軸歩行をしようとするため

 ※下降時のアイゼン引っ掛けは致命的になりやすい。これを防ぐには、前向きには降りないで、少し横向きに降りるとかなり防ぐことが出来ます。
 アイゼンの引っ掛けをしないために左右の足を離して歩くというのは、机上の空論です。確かに傾斜の緩いところではそれは可能ですが、上の説明の様に、斜面で恐怖を感じると必ず左右の足は近づいてきます。
 これを根本的に解決するためには、左右の足を開くだけでなく、体を斜面に対して横を向ける必要があります。
 体を横に向けて下降することで、自ずと左右の足は離しやすくなります。



 ピッケルバンド  
 それぞれにメリット、デメリットがあり、使い分けることが必要。 どれが一番というのはナンセンス。
・肩掛けのメリット
 ・・・持ち替えられる
・肩掛けのデメリット
 ・・・手を離して行動しにくい(離すと足にまとわりついたり、ヒモが邪魔になり仕舞いにくい)
 ・・・利き腕でない手では、思い通り操作できず、持ち替えるメリットが机上の空論になりやすい

・リストループのメリット
 ・・・手を離して行動しても、腕の近くで引きずるだけなので邪魔になりにくい
・リストループのデメリット 
 ・・・持ち替えられない

・妥協案
 @リストループを肩のスリングに付けて、普段は肩掛け、手を離したい時はリストループにする
 Aリストループを腕に通さないで持ち替えられるようにし、手を離したい時はリストループに腕を通
 Bバンド無し ・・・意外に落とすことはない



ピッケルの役割   

・行動のための積極的利用

 @杖として使う

 
 杖として使うのであれば長い方が有利だと思われがちだが、実際に使う斜面では長すぎると使いにくい場合が多い。
 斜面でバランスを取るための杖としてのピッケルと、傾斜の緩いところで使う杖としてのストックと使い分けるのがお勧め。


 
 Aピック(ピッケルの歯)を刺して手がかりにして登る(短い方が使いやすい)
 
 ピッケルのピックを刺してバランスとをるだけでなく、スリップしたときに滑落を防ぐ対策にもなります。


 シャフトを刺して手がかりにする(長い方が支持力があるが、場所を限られるし使いにくい。短くても問題ない)



・行動の安全を図るための積極的利用
 ピックを刺して、アンカーにする(短い方が使いやすい)
 シャフトを刺して、アンカーにする(長い方が支持力があるが、場所を限られるし使いにくい。短くても問題ない)

・トラブルが起きたときの消極的利用
 滑落停止 滑落してから必要になる技術だが、成功率はとても低い
 初期制動 滑落しないために必要な技術で、成功率は比較的高い

 ※初期制動を実現するには、斜面に対して前を向いて下降していては無理です。ピッケルを刺す位置が体の横になってしまうため、体重を支えることは不可能です。これを解決するためには体の中心でピッケルを刺す必要があるのですが、このためには体を横(斜め)にしている必要があります。
 (詳しくは講習に来ていただくか、遠くで見学してください)


 ※雪上講習=滑落停止の練習となりやすいが、実際には滑落が始まるまでに出来ること、やるべきことがたくさんある
山岳ガイド・ミキヤツ登山教室


 山岳ガイド・ミキヤツ登山教室は、加藤美樹、久野弘龍がそれぞれ主催する個人ガイドの集合体です。
 
 日本山岳ガイド協会認定のもと、山岳ステージ2(登攀ガイド)、国際山岳ガイド資格を保有し、ガイド業を行なっています。




 私たちは、ガイド業を通じて技術や道具、登山情報を、過去の慣習や過去の経験ではなく、現在の経験に基づいた現場情報を提供することで、登山をする方が安全に楽しめることを目標としています。

 ガイド業務中には皆様の安全を図ることはもちろん、、講習会や行動しながら登山技術を伝えることで、ご自身で行く登山をサポートします。

 これらのことを実現するための手段がガイド業であり、皆様に提供する情報を得るために現在もプライベートでのクライミングを続けています。 




主なガイド・フィールド

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加藤美樹・久野弘龍

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山岳ガイド ミキヤツ登山教室は、夏山、冬山ともに国内では八ヶ岳、穂高岳、槍ヶ岳、剣岳、北岳、甲斐駒ケ岳など日本全国で、海外ではヨーロッパのシャモニ、ドロミテで山岳ガイド、登山教室、クライミ
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