山岳ガイド ミキヤツ登山教室


山岳ガイド ミキヤツ登山教室が紹介する、現場からの登山装備、技術論 

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山岳ガイド・ミキヤツ登山教室 久野弘龍・加藤美樹
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「歩く」といっても、平地と登山では全く違う技術です。登山で歩く技術はクライミングと同じ分類で考えるべきです。


 足を使っての運動は、重心移動で成り立っている

 登山、クライミングに限らず人間が足を使って動く場合、進むべき方向に足を出し、それに重心を移すことで身体が移動しています。

 左足一本で立つことができるため、右足を進みたい方向に移動させることができます。
 そして右足に重心を移すことで身体が移動し、これが次の軸足となって身体を安定させることができれば、左足を進みたい方向に移動させることができます。
 このように単純に足を交互に出しているのではなく、片方の足だけで身体を支える(静止させる)バランスと重心の移動によって、歩行が成り立っています。

 @軸足一本で体を支える
 Aもう片方の足を進みたい方に移動させる
 B移動させた足に重心を移動させて次の軸足にする

 つまりBの段階で余分な力を使うことなく重心を移動できれば歩行が楽になり、反動をつけることなく重心を移動できれば安全な歩行が可能になります。



 平地と登山の歩行の違い、クライミングとの共通点

 「歩行」という言葉を使うため、平地と登山は同じ動きと考える方がいますが、登山の歩行はクライミングと同類であっても、平地の歩行とは全く別物です。平地の歩き、平地のランニング、山の歩き、山のランニング、クライミングという、足を使っての運動を考えたとき、分類は以下のようになります。
 
平地の歩き、平地のランニング、山のランニング
山の歩き、クライミング

 青グループに属する「平地での歩行」は、上述の三つの動きが全て同時進行します。つまり、一本の足で支えると同時に既に重心は移動し始めていて、足が着地した時にはすでに次の足が動き始めています。

 これに対し赤グループに属する「登山の歩行」では、三つの動きが同時進行はせず、一つずつ順番に行われます。
 クライミングも実は同じことが起きていて、傾斜の強いところでも足場が小さいところでも確実に一本の足で体を支えることができなければ、次の足を安定したところへ出すこともできず、そうなればその足に重心を移動させることもできなくなります。

 以下では三つの動き其々を見て見ましょう。



 軸足一本で体を支えるという事 ・・・足裏の重心位置

 人は片足一本で立つことができるため、二足歩行が可能になっています。このため、もし歩行中に一本の足で立つことができなければ、それ以降の動きが全て不安定になるか不可能になってしまいます。
 人は一本の足で立つために多くの部位を使っていますが、登山中のそれを改善するためのトリガーポイント(ここを改善すればすべてが変わる場所)は「足裏のどこで立つか」です。

 登山は靴底全部を付けて歩く事を進められていますが、靴の中で実際に足裏全体で立とうとするのは間違いです。
 人は止まっているとき正しい姿勢で立っていると「くるぶしの下」、つまり脚の真下に重心がありますが、登山中は指の付け根付近に重心点がある意識が必要です。
 くるぶしの下に重心点があると、バランスを崩した時に体全体でバランスを取る必要がありますが(※1)、指の付け根付近に重心点があると膝、足首を使うことで上半身を大きく動かすことなくバランスを取ることができます。登山中は平坦な理想的な足場に立てるとは限りません。このため、くるぶしの下というニュートラルポジション(※2)に重心をもってきているよりも、平坦でない場所でもより小さな動きでバランスを取りやすい指の付け根付近に重心があった方が、一本の足で立ちやすくなります。



(※1)登山中は常に平坦な場所で足裏全体に均等に荷重できるとは限りません。このため足裏での重心移動によってバランスを取ることができなくなります。このため立っている場所によっては体全体を使ってバランスを取ることになってしまいます。これが限度を越えてしまうとバランスを崩すことによる転落へつながりやすくなります。

(※2)「ヨガ」の様に平坦な場所で止まってバランスを取る場合、くるぶしの下に重心がある方が体が安定します。これはそこに立っていた方が骨格がまっすぐ上に伸びやすく体がブレにくいためです。また仮にバランスを崩しそうになってもそこに基点がある限り、平坦な場所であれば足裏の中で重心を少し移動するだけでバランスを取り戻しやすいためです。

 ・・・・ちなみに、スキーでは上述の※1、※2の考え方を使って滑ると上手くなります。つまり、スキー靴という固められた靴の中で重心を移動するためにはくるぶしの下を基点にしていた方が都合がよく、しかもそこから重心を移動するためには体全体を動かす必要があるという事です。上手なスキーヤーを見ると上半身が動いていないように見えますが、スキーの板という平坦な場所を基点にすると動きがよく見えるはずです。


 
 進みたい方に足を置くために・・・

 今歩いている場所が階段という、「平地が上に連続する場所」であれば、それほど問題は無いのですが、岩場や小さな足場、更に雪や氷の上となるとそれなりのテクニック、道具が求められます。

 登山靴で小さな足場に立つためにはスメアリングというクライミング技術を理解して実行する必要があり、もっと小さな足場をとらえる為にはクライミングシューズが有効です。雪や氷に足を置いて立つためには、アイゼンを付けて数あるアイゼンワークの一つ、もしくは合わせ技?を実行する必要があります。

 「進みたい方向に出す足」は「次の一本で立つ足」になるため、丁寧に、そしてその後確実にそれに立っていられるように工夫して足を出す必要があります。登山のためにクライミングをしたり、アイゼンワークを練習してテクニックを身に着ける目的の一つがここにあります。

 ・・・そして、テクニックを身に着けるもう一つの理由が次に説明する「重心移動」です。


 重心移動をスムーズに行うために

 人が歩くとき、足裏の中で重心は後方(脚との結合部であるくるぶし付近)から前方へ移動して、最後は指の付け根から指の先端達することで足は地面から離れていきます。これが途中で止まってしまったり、移動の妨げになる原因があると、歩行は困難なものになります。
 このため足裏での重心移動をスムーズにすることが、疲れない歩き方やバランスを崩しにくい安全な歩行に繋がります。

 スムーズな重心移動を妨げる最大の要因は、登山中つま先が上がった状態で足を置くことです。
 「登山の歩行」という言葉を「斜面での歩行」に変えてみると、つま先をまっすぐ前方に向けて歩けば、自ずと爪先が上がった状態になってしまいます。これでは踵からつま先へ重心を移動させるために、更に高度を稼がなくてはならなくなります。
 また既に爪先が上がっているため、足首の可動域の限界に達してしまい、ここで体が前に出なくなり爪先方向へ重心が移動できなくなってしまうどころか、後ろに跳ね返される原因になってしまいます。

 この様な状況になると、後ろ足を蹴ったり、反動を使って強引に爪先方向へ重心を移動させることになって疲れてしまったり、落石を引き起こしてしまいます。また、後ろへ跳ね返される力を受ければ当然バランスを崩す原因にもなります。

 これらの状況は斜面で爪先を前方に向けることが原因で起きているので、爪先を横に向けて歩くことになるのです。横に向ければ当然のことながらつま先とかかとの高低差が小さくなり、楽に重心を移動できるようになります。
 登山中、爪先を開いて歩くのはこのためです。

 また、もう一つの解決法があります。
 前の段階の「A進みたい方向に足を置く」時に、最初から指の付け根付近、もしくは指の先端に重心を移動できるように足を置けば解決します。だからクライミングは「べた足」をせず爪先だけを使って立つ必要があり、登山の歩行中はフラットフッティングであっても足裏全体で漠然と立つのではなく、重心を指の付け根付近に持ってくる必要があるのです。

 モチロン、足を置くときにより水平で低い位置を探すのが優先事項です。
 しかし足を置く場所が限られるときには、つま先を開いて足を出したり、つま先立ちなるように足を出したり、あるいはべた足をしていても重心が爪先付近にあるようにすることで解決します。

 クライミングやアイゼンワークではこれらの考えを実現するためにすべての動きが成り立っています。
 クライミング中はべた足でなくつま先立ち。雪山でのフラットフッティングは爪先を開いて歩く。傾斜が強くなったらフロントポインティング、あるいはスリーオクロック系を多用する。
 いずれもスムーズな重心移動を実現するために工夫された動きです。


 ・・・だから下りは難しい

 歩行は3つの動きで成り立っていて、しかも其々が独立した動きであるのに前の動きと次の動きに影響を受けたり、与えたりしているという事は理解していただけたでしょうか。
 だから下りは難しくて、危険を伴って、疲れるのです。

 下りで3つの動きを丁寧に行おうとすると体に無理を生じやすく(※)、だから3つの動きを同時進行させようとしてしまいます。
 特にA足を出す、B重心移動をスムーズに行うのところが同時進行しやすく、足元が不安定な場所では危険を伴ってしまいます。

 さて、このまま「だから下りは難しいから注意してね」だけで終わってしまってはガイドではありません。


※左右の足が上下に分かれると、上になった足の膝が前に出ることになります。
 下りで前を向いて歩くと、上にある足の方が膝が前に出ているのに、それよりも前に下の足を出さなくてはならなくなり、骨格、筋肉に無理を生じてしまいます。



 ・・・だから下りは横向きを多用する
 下りでは足を降ろすという考え方でなく、足の付け根を降ろした結果、足が着地するという考え方が必要です。
 そう考えると、下りで歩行の3つの動きを工夫する必要があります。

 下りでまっすぐ前を向いて歩けば、当然ながら足の付け根は常に同じ高さに位置してしまいます。
 しかし体を横向きにすれば、骨盤を傾けることで左右の足の付け根が上下し、それだけで足の着地も重心移動もスムーズになります。
 
 さらに、足の位置が上と下に分かれて膝の位置が前後しても、下りで体を横に向けていれば、下に出す足を必ずしも前に出す必要は無くなるので、骨格、筋肉に無理を生じないだけでなく、膝よりも強くて疲労しにくい「お尻の筋肉」を積極的に使うことができます。

 この動きは、たぶん誰にとっても経験したことの無いような特別な動きではありません。
 疲れたとき、眠い時、階段の手すりを持って降りた経験は誰もがあるはずです。その時の動きはまさにこの動きになっているはずで、登山でもその合理的な動き(※)を積極的に取り入れようという話です。

 傾斜を感じるような下り斜面では、少しだけでも良いので横を向くと膝の負担を減らすだけでなく、より安全になります。

※下りで横を向く合理性は他にも多くあり、常に斜面側に片手があるため、バランス保持のために役に立ちます。
 また、急傾斜の岩場を降りる時にも後ろ向き(岩の方を向く)に降りるのではなく、横向きを多用すると、広い視野での足場の確認と手を使ってのバランス保持を両立させることができるため、その重心の移動の容易さと併せて考えても、下りで横を向くことはより合理的な動きであると言えます。


 登りでも横向きは有り
 登りでも当然横向きは有効です。
 斜面をジグザグに登ると楽なのは、斜面に対して体が横を向いているため、足を出しやすく(※)、しかも爪先が横を向いているためです。
 同時に膝だけでなく、強いおしりの筋肉を使いやすくなるため、斜面に体を横向きにして登るのは有効です。

※何度も繰り返しになりますが、足を上げる動きというのは膝が前に出る動きです。
このため、クライミングのような傾斜の強い斜面、場所では前を向いて足を上げようとしても膝が当たってしまい足を上げられません。そんな時は横を向いてしまうと簡単に足が上がるだけでなく、立ちこみも容易になります。
 ・・・・詳しくはクライミングしてみてください

歩行技術 その2へ続く
山岳ガイド・ミキヤツ登山教室


 山岳ガイド・ミキヤツ登山教室は、加藤美樹、久野弘龍がそれぞれ主催する個人ガイドの集合体です。
 
 日本山岳ガイド協会認定のもと、山岳ステージ2(登攀ガイド)、国際山岳ガイド資格を保有し、ガイド業を行なっています。




 私たちは、ガイド業を通じて技術や道具、登山情報を、過去の慣習や過去の経験ではなく、現在の経験に基づいた現場情報を提供することで、登山をする方が安全に楽しめることを目標としています。

 ガイド業務中には皆様の安全を図ることはもちろん、、講習会や行動しながら登山技術を伝えることで、ご自身で行く登山をサポートします。

 これらのことを実現するための手段がガイド業であり、皆様に提供する情報を得るために現在もプライベートでのクライミングを続けています。 




主なガイド・フィールド

 海外

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イタリア・ドロミテ・クライミング
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 国内

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北岳・甲斐駒ケ岳・クライミング
 その他


加藤美樹・久野弘龍

日本山岳ガイド協会認定
国際山岳ガイド連盟認定
八ヶ岳山岳ガイド協会所属

〒408−0041 
山梨県北杜市小淵沢町上笹尾3331−711 
メール:mikiyatsu2008@gmail.com  
電話:0551‐36‐6345 
携帯:090‐7195‐6134(久野

ブログ:山でボナペティ!  
ホームページ:http://mikiyatsu.jp/
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山岳ガイド ミキヤツ登山教室は、夏山、冬山ともに国内では八ヶ岳、穂高岳、槍ヶ岳、剣岳、北岳、甲斐駒ケ岳など日本全国で、海外ではヨーロッパのシャモニ、ドロミテで山岳ガイド、登山教室、クライミ
ングスクールを行っています