登山のための岩登り
岩登りを練習する目的は様々ですが、本格的にクライミングを目指していく場合でも、登山中での岩場
の通過を考える場合でも以下のことが重要です。
特に岩登りを練習して登山に役立たせようとするのであれば、岩登り中の目線や視線を意識するとよ
いでしょう。
岩登り(クライミング)と歩行(登山)の違い
全く別物のように思われがちですが、重心移動で行動が成り立っている点や、判断の方法、過程など
共通点も数多くあります。
基本的考え方はそれほど違いはなく、それゆえに問題点もほとんど同じです。
大きな違いは、動きの大胆さと精度であり力強さだけです。
岩登りは左右の足に交互に重心を移動させることで体が移動するという点で、歩行と同じです。
その移動方向が上下か水平かの違いがあり、それゆえ、重心移動のために手を必要とするかどうかの
違いがあるだけです。
![](img109.jpg)
上の写真を見れば岩登りに見えますが、下の写真は歩きに見えます。
![](img110.jpg)
爪先で小さな足場に立って、次の足場に足を移動しています。この移動した足に乗り込んでいくと、上
の写真になります。
手で体を引き上げていないのに注目してください。岩登りは、足で移動するものだと理解できるでしょ
う。
岩登りは歩行をより複雑にしたものであり、求められる能力(筋力)、精度(足を置く位置や重心移動の
スピード)がより高くなるだけです。
ですから、登山をする人全てに岩登りを経験し、登山に活かしてもらいたいと思います。
行動中の目線と視野 ・・・ステップ1 登山中の目線、視線については歩行技術で詳しく紹介して
います。
歩行でもクライミングでは、その動きは重要ですが、目線と視野もわすれてはなりません。
登山、クライミング中は、目で困難、危険を確認し、そしてどう対処するかという順番で行動します。
一般論として話すのですが、岩場での行動やクライミングが苦手な方,更にはルートファインディングが
苦手な方の多くは、行動中の目線(視線)と視野に問題があります。
つまり、歩行やクライミング中にどこを見ているかということです。
登山の技術書を見ると、最新のモノでも「目線を上げて、数b先を見て歩きなさい」と書いてあります
が、これだけでは間違いです。
@歩くことが困難な場所や転ぶと危険な場所、クライミング的な動きの必要
な場所
今から足を置こうとする場所を見て、足が着地するまで目線を離してはいけませ
ん。もちろん比較的困難でないなら足が着地する寸前に、さらに次に足を置くべき
場所に視線を移動することになるでしょう。
A足を引っかけたり、安定した足場など簡単な場所
基本的には足元を見て歩きますが、時々目線を上げて、数歩先や進むべき方向
を確認しながら行動します。
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いずれにせよ、ここまでは視線(支点)の話。
では視野は?
もちろん難しいときは視野は狭まりますが、どちらの場合でも視野は漠然と広くしておきます。
足を置く場所を捜すためには、視界に入っている範囲で全体を見ながら、困難な箇所になるほど精度
を上げて、次に足を置く場所に視点を合わせないといけません。視野は広く。しかしその視線(視野の中
心)は最も見たい部分が見ていないといけません。
そもそも、岩場自体の通過が苦手な方は、目線が足場からずれていて足元を見ていないか、目線を外
すのが早すぎることが多く、そうなるとしっかりとした足場があっても、置き方を間違えたり、雑な置き方
になってしまいます。自分では意識していなくとも足下に不安を残したままでは、当然のことながら岩場
でスムーズに行動はできません。
岩場の通過が得意な人や岩登りが上手い人ほど、目線が足下から離れないという事実を知ってくださ
い。
何歩か先を見て歩けるのは平地の話です。
平地と混同したもっともらしい話を登山に持ってきてはいけません。
登山中は難しい個所であればあるほど、足元を見て行動することになります。
足元を見て行動しなくてはならないために、「先を見ていないという事実」を認識
していれば、先を見るための行動を取らなくてはなりません。
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繰り返しになりますが、転ばないために足元を見て歩かなくてはいけません。
何歩か先を見て歩くのではなく、足元を見て歩いているため、先が見えていない。
だから、途中で止まってでも先を見なくてはなりません。
これが事実です。
作戦を立てて行動する ・・・ステップ2
以上のように、難しい箇所で視野が狭くなってしまうのは仕方がありません。
難しいところほど足場を見続けないといけないのだから。
しかし視野が狭くなってしまったり、足元ばかり見ていてはどっちに進んでいいのか解らなくなってしま
いますし、先のルートも見つけられなくなってしまいます。
そこで次に必要となるのが、目で見て難しい場所と簡単な場所を確認し、それらを分け、さらにどういう
動きで困難な箇所を通過するかという作戦を立てる能力です。
難しい箇所では視野が狭くなり、そういう状況で正確にルートを確認、特定することはできません。
頑張って顔を上げても、興奮状態になっているため冷静な判断は下せないでしょう。
ですから、簡単な場所にいる間に、「その先の危険」、「困難さ」、「進むべき方向」、「進み方」、「登り
方」、そして最も重要な「どこまで進むのか」を判断し、実行しないといけません。
![](img111.jpg)
多くの方が難しい場所と簡単な場所を分けて行動することがないか、あるいはそれができても「どこま
で進むのか」という「区切り」がないまま行動してしまいます。このため、視線、視野共に下を見たままで
同じになってしまい、本来足を置くべき場所を探せず、それゆえ作戦がたてられなかったり、岩が上手く
登れなかったり、道に迷ったり間違えたりします。
進むべき方向が解らなくなったり、難しい状況になって顔を上げるのではなく、既に確認して解っている
安全な場所で計画的に顔を上げて、ルートその他の状況を確認し、作戦を立てては実行することを続け
ます。
その為にも行動中は目線は常に動いているはずです。
技術という名の「武器」を持つ ・・・ステップ3
作戦を立てるといっても、逆に考えてみればクライミング能力や知識がなければ作戦のたてようがあり
ません。
具体的にいえば、岩登りができないのに、岩場を通過する作戦は立てようがないということです。
もちろん、岩場を危険箇所と置き換えても同じです。
![](img112.jpg)
「ステップ1」までの段階では、行動の癖と考えれば、自身でも改善可能だと思います。
しかし「ステップ2」の段階では、岩登り技術や歩行技術を上げないと、不可能な場合があります。
「技術という武器」が選択肢として手元に無ければ、「困難や危険という敵」に対処する作戦も立てられ
ないし、戦うことも出来ません。
つまり、自分がどの程度能力があり、実際に何が出来るかを知っていなければ、自分がどの程度の困
難、危険に対処できるかどうかも解らないし、どう対処してよいかも解らないでしょう。
登山はクライミングも含めて、敵を軽視すると命に関わりますし、過大視すると思い切って行動できずに
楽しむことが出来ません。
ですから、判断能力を上げるためにも、技術を身に着け、向上させる必要があります。
例えば高尾山程度の山であれば、街を歩く程度の歩行技術で登山が終わるでしょう。
しかしこれが、ガレ場や岩場の出てくる北アルプスなどになると同じ歩き方では通用しなくなります。
![](img113.jpg)
詳しくは登山の歩行技術で説明していますが、しっかりと足の指まで荷重すして足指を積極的に使った
歩きをすることで、不安定な場所でもスムーズな重心移動をしなくてはなりません。
足場が悪くなるとバランスが悪くなるとか、下りが苦手な人は、足指までしっかりと加重しないで踵より
であるく、「ベタ足」になっています。
登りでも、下りでも指先にしっかりと加重することで、スリップしにくくなったり、バランスが良くなります。
岩登りの必要性 ・・・新しい世界
岩登りがすぐに登山に役に立つとすれば、これらの内容を改善できる可能性があることが挙げられま
す。
岩登りの場合、歩行よりもより困難な場所で、しかしそのスピードは歩行よりも遅くなります。
![](img114.jpg)
限られた足場や手掛かりを利用するためには、目線や視線を意識して動かす必要がありますし、小さ
な足場に乗るには、爪先で、しかも歩行よりもより高い精度で足を動かす必要があります。そして、それ
らを利用して岩場でスムーズに行動するには、足指を積極的に使った動きが必要となります。
バランスが悪いとか、岩登りが苦手、さらに岩登りが上達※しないという方は、この足の使い方と目線
がズレていると思われます。
(※岩登りが上達しない・・・・5.9(Y)以上がなかなか登れないという方)
![](img115.jpg)
岩登りの練習をすると、どうしてもゲームのようになってしまい、「登れた」か「登れなかった」かという結
果にこだわってしまいます。
しかし、ここまで読んで「そうかもしれないな」と思われた方は、その課程が重要だということが解ってい
ただけると思います。
もちろん、楽しく岩登りをする為に結果を出すことも大事ですが、岩登りが上手くならない、あるいはそ
の成果があまり出ていないという方は、その課程が間違っているのかもしれません。
課題はなにかを理解し、それに対処した行動をしていれば、結果は付いてきます。
登山とクライミング。
全く別物のように思われがちですが、違うのはその精度と程度(レベル)であり、実際には重心移動で
行動が成り立っている点や、判断の仕方(課程)など共通点ばかりであることが解ってもらえると思いま
す。
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