雪山の服装について
山の服装に求める機能は、体温調整機能です。
山の服装というと、速乾性に優れた化学繊維と、ウールに代表される濡れても冷たく感じにくい素材とに分
けることが出来ますが、どちらも体温調整に有効だということでは共通です。
ではどのように使い分ければいいのでしょうか。
雪山に限らず、登山の服装に求めるモノは速乾性です。
雪山というと寒いことを予想し、必要以上に保温性を考えがちですが、実際の行動中は熱い場合が多い
のです。
まず第一に汗で濡らさない。
そして濡れてしまったらそれが冷たさに繋がらず、乾きやすい服装というのを心がけるのが重要でしょう。
登山の服装はレイヤリングが必要だと言いますが、これは乾きやすさ、保温性、温度調整のしやすさを実
現するための工夫です。
速乾性素材
「速乾性」とは、「汗をかいた時、それを素早く吸収し、乾燥しやすくする」ということです。
重要なのは素材が速乾性であるかどうかではなく、その機能を発揮させるためにいかに工夫しているか
が重要です。
速乾性を山の服装に求めるのは、二つの効果が考えられます。
@乾く時に熱も同時に放出し、涼しさを保つ
A濡れた状態を改善することで、保温性を維持する
実はこの二つは相反する機能ですが、これを実現するために、高性能な生地は二重構造になっていま
す。
内側は点で皮膚(中に着た服)に接し、外側には内部を点で吸い上げた水分を拡散させる機能をねらって
います。
これによって、冷たく感じないようにしつつ、素早く乾かすことを狙っています。
ウールのススメ
ウールは濡れても冷たさを感じにくいという特徴があります。
濡れると発熱するという話もあるようですが、実際の処は僕は解りません。
しかし、濡れても肌に直接身に付けていて(下着として使用している)、その外側に保温性のある服を着て
いれば、冷たく感じないどころか暖かく感じることを経験的に知っています。
ウールは乾きやすいのではなく、濡れても冷たくならないというのが特徴です。
ですから肌に直接身に付ける下着として使用すると、特に効果が大きいようです。登山は行動している限
り汗をかき続けるので、必ず濡れた状態が続くはずです。
夏場であっても山は肌寒いことがあるので、ウールの(T)シャツは効果的です。
また、冬季は速乾性素材で素早く乾かすよりも、何時も濡れた状態になっても暖かさを保つ機能を優先す
べきかもしれません。
ただしウールを下着として使用する場合は、その上には速乾性素材、しかも生地が二重構造(裏側に吸
湿、外側に発散効果を持たせた構造)のものを使用すると効果が大きくなるようです。
ハイブリット素材から考える、ウールと化学繊維のレイヤリング(重ね着)。 夏と冬では逆が良い。
吸湿・蓄熱効果を持つウールと、速乾性機能を持つ化学繊維を組み合わせたハイブリット素材を使用した山の服が発
売されています。
ウールは水分を貯める機能が高いため、裏側の化学繊維で吸い上げた汗を、表側のウールがどんどん吸水すること
で、皮膚を乾燥した状態に保とうというのが狙いです。
しかも、ウールは防臭効果も高いため濡れてもクサくなりにくいという効果も狙っています。
確かにこの効果は大きく、実際にレイヤリング(重ね着)でも確認でき、秋や春など少し涼しい時に効果がよく解ります。
しかし冬季はウールを内側、速乾性素材を外側にした方が良さそうです。
ウールが汗を吸い取りつつ保温し、外側に着た速乾性素材がウールが濡れすぎないように、吸水発散させる効果を狙
います。
そもそも速乾性素材が乾く時には熱を奪う(気化熱)効果があるので、内側にウールを着ていた方がその影響を受けに
くくなります。
「下着の下着」には薄手のウール素材、その上に「下着」として吸水速乾性素材(パタゴニアならキャプリーン3や4)を
着ることで、冬場はかなり快適に過ごすことが出来ます。
要は肌に振れる下着が少し湿っている状態をウールによって保つことで、蓄熱の効果を狙います。
しかし、汗の量が多くなる山行や、体質的に汗をかきやすい方、体力がなく汗をかきやすい方は、極速乾性素材を肌に
着てその上にウールを重ねることで、地肌に濡れ過ぎた繊維を近づけない重ね着も効果的です。
|
冬山の服装の基本
冬山で着る服は基本的には3種類。下着、中間着、アウターです。
登山の服装は細かく温度調節する必要からも レイヤリング(重ね着)がよいとされています。
しかし、ただ重ね着すればよいというのではなく、それぞれの層に異なる機能をもたせて、全体として効果
を発揮するようにしなくてはなりません。
たとえば、どんなに良い下着を着て、ゴアテックスの最高のジャケットを着たとしても、中間着にゴアウィン
ドストッパーのフリースを着たらまったく意味がありません。下着が素早く汗を吸収し放散しても、中間着が
フィルム付のフリースではそこで水分の放散が止まってしまいます。
重ね着するにはそれぞれの層(服)で、最高のパフォーマンスを発揮させるために、各層が連携していな
いといけません。
そのためには「いくつもの性能を備えた服」は不要です。
例えば下着には吸湿、速乾性のみを要求し、中間着には保温性のみを要求します。この時重要なのは、
中間着で防風性や吸湿性を求めないことです。せっかく下着がうまく吸湿(水)して放散しようとしても、その
上の中間層でそれを妨げるような吸湿(水)性があっては意味がありません。また、防風性が高いモノを着
れば、当然中に湿気、水分が残ります。
アウターは防風性と透湿性のみを要求し、保温性を求めてはいけません。つまり、中に保温材が入ってい
れば、それに水分が溜まり、下着、中間着の性能を落としてしまいます。
そんなわけで、できることなら下着、中間着、アウターは同一メーカーで計算尽くされた製品を求めるのが
最も良いと思います。
それが無理なら、店の人と相談すべきでしょう。
加藤・久野の着ている服は全てパタゴニア製品ですが、パタゴニアは下着からアウターまで計算して作ら
れています。
下着は吸水性、放散性効果。
中間着は保温性
アウターは防風性。
中間着は下着の性能を損なわないようにスカスカで、空気を良く通します。アウターを着ないと、風通しが
良すぎて寒いくらいですが、これぐらいの空気の通りがないと、下着の速乾性能は損なわれてしまいます。
しかし、この中間着、アウターを着た時に最高の保温性を発揮します。空気の通りがよいということは、もし
その空気の流れを止めたとき、それがデッドエアになり、保温性に繋がるのです。
私達の冬の装備2020シーズンは以下のとおりです。参考にしてください。
<上半身>
下 着 : メリノエア
中間着 : パタゴニア・R1フーディ二 + ナノエア(ただし、僕らは体力があり、仕事で歩くペースだと
寒すぎるため。)
アウター : 以下のものを使い分けします。
・パタゴニア アセッショニストジャケット (ハードシェル)
・パタゴニア フーディニ(薄手のソフトシェル)とM10ジャケット(超薄手のハードシェル)の組み合わせ
・パタゴニア M10ジャケット単体
・パタゴニア DASパーカー
※更に寒いときにはアウターの上に、行動中は着ないですが、確保中などにダウン(ダウンセーターのフ
ード付き)を着ることがあります。
<下半身>
下 着 : パンツ+メリノエア
中間着 : パタゴニア・R1パンツ
アウター ガルヴァナイズドパンツ
<パタゴニア・R1フーディ二はお勧め>
冬山の重要装備として目出し帽がありますが、パタゴニアのR1フーディ二はフードが目出し帽を兼ねています。目出し
帽とインナーが一体のために首周りが露出することなく、とても快適です。
また、ジッパーあごから首にかけてを開けることができるため、体からの蒸気や吐く息がうまく逃げていくために、サング
ラスをしていても曇りにくくすることができます。ですから眼鏡をしている人にも絶対のお勧めです。
ここ最近のベストアイテムをあげろと言われれば、このR1フーディ二こそがそれに当たるでしょう。
|
<ダウンを着る時> 内側か、外側か。・・・だけでなく、ダウンか化繊かという事も重要です。
一般登山の場合、基本的にはダウンは必要ないと思います。
ただ、アイスやミックスクライミングの時には中間着として着ることがあります。これは確保が長くなることが多く、冷えた
体で数十b登って、また確保で体が冷える。ということを繰り返すためです。
だから基本的には行動し続ける雪山登山であれば必要ないでしょう。
また、これらのダウンはアウターの中に着るモノなので、非常に薄いダウンを着ることになります。「ダウンジャケット」で
はなく、「インナーダウン」とか、パタゴニア製品なら「ダウンセーター」と呼ばれるモノです。また、「ダウンベスト」でも良い
でしょう。
ダウンはやはり圧倒的に保温力が高いので、着ると非常に熱くなりがちです。しかし、後述する、ソフトシェルのアウタ
ーと組み合わせるとなかなか威力を発揮します。
一般レベルではダウンは必要ないといいましたが、前述したような小さなダウン製品であれば、危急時の防寒着として
持っていくと便利です。軽いし、圧倒的に暖かいし。
まずは小さなダウン製品を見つけるのがカギです。
また、ダウンを外に着ることもあります。
アイスクライミングやミックスクライミングなど、マルチピッチでのクライミングの場合、確保している間はとても寒いので、
確保中のみ着る場合には、大きめのジャケットを着る場合があります。
上述の用に内側に着るより体温調整がし易い(脱いだり、着たりができる)という点で、こちらの方が一般的かもしれま
せん。
内側に着ても、外側に着ても、中綿がダウンと化繊のモノとを使い分ける必要があります。
ダウンは圧倒的に保温力が高い反面、大量に保水すると全くその効果が無くなり、乾かすのにも時間が掛かります。
これに対し、化繊は多少の濡れでも保温力が大きく低下することは無く、その為に完全に乾かさなくてもある程度保温
力を保てるという点で、乾かす時間も短くなります。
また、ダウンと化繊のもう一つの見逃せない違いとして、耐久性も挙げられます。
生地が破れた場合、ダウンが中の羽毛が外に散っていってしまうのに対し、化繊の場合はそれほどダメージを受けず、
機能を保ち続けるということがあります。
ですから外側に着る場合は、積極的に化繊モノを選ぶことは大きなメリットになります。
総括
ダウンの圧倒的保温力を手に入れる替わりに、耐久性や保水時の保温力低下を受け入れるか、保温力はダウンよりも
劣るが、耐久性、保水時の保温力低下が少ない化繊をとるか。
要は、その山行で考えられる用途をよく考えて使い分けることが必要です。
|
ジャケット(アウター)はソフトシェルという選択肢もアリ
上述してきたとおり、冬山の服装で求められるのは、素早い吸水、吸湿、放散です。下着、中間着がうまく
それらをこなしても、アウターがうまく水蒸気を外に出すことができなければまったく意味がありません。
ゴアテックスに代表される防水透湿素材のジャケットは、「まったく透湿性がない素材に比べれば」劇的な
ほどそれがあります。しかし、冬山での行動でかく汗をスムーズに出すほどには透湿性が足りないのも事実
です。
近年、ソフトシェルなるモノが世の中に出回っています。
確かにソフトシェルは完全な防水性はありません。しかし、透湿性はアウターとしては異次元のモノです。
湿雪の春の山は雨具を使うとすれば、冬山には完全防水は必要ありません。
ソフトシェルの不満をあげるなら、強い風(風速20b以上で、稜線で歩けないほど)が吹いた時に少しひん
やりすることです。また、防水性に劣るというのもやはり不安です。しかし、一部メーカーにおいては、今シー
ズンのソフトシェルはかなり解消しているようです。
上述した不満の原因は「縫い目」にあったようです。繊維自体が外からの空気を通したり水分を通すより
も、縫い目がその原因になっていたそうです。縫い目には当然穴が空いているので、そこが進入口になっ
ていたそうです。そして、この縫い目をなくすことで不満を解消しています。
また、厳密な意味での防水性はソフトシェルにはありませんが、撥水性は備えています。ですから、多少
の湿雪や雨が降ってきても大丈夫です。仮に強めの雨が降ってきても安全圏まで逃げる2時間程は水が
浸みてきません。
しかし、やはりハードシェルの耐水性、防風性は捨てがたいものです。
ハードな山行を行う時には、信頼性という点でハードシェルを選ぶ必要があるでしょう。
<ソフトシェルの変わった、でも役に立つ使用法>
加藤、久野は夏の雨に対する以外はほとんどソフトシェルを使用しています。つまり、雪のシーズン12月から5月はソフ
トシェルを使用するということです。ヨーロッパやアンデスのミックスルートでもソフトシェルです。
ソフトシェルの方が圧倒的に透湿性があり、常に体の中が乾いた状態になるというのがメリットです。その凄さはゴアテ
ックス素材と比べた場合、そう、車で例えるならクラウンとジムニー、の快適さの違いぐらいにはあるでしょう。
しかし、冬山でもすごく荒れた時、あるいは海外クライミングで天候悪化時の危機的状況を考えた時、不安があるのも
事実です。それに対するために薄手のハードシェル、つまりゴアテックスなどのフィルム付き素材のアウターを持っていき
ます。
つまり、考え方はアウターにもレイヤーシステム(重ね着)を取り入れたと言えるでしょう。
これにより、例え寒くても平穏な天気での行動中はソフトシェルの快適性を、荒天時にはハードシェルの安心感を手に
入れることができました。
実はこの方法、パタゴニアスタッフで、自身もかなり登っている鈴木さんに教えてもらった方法なのです。しかし、パタゴ
ニアではそのアドバイザーで、世界でもトップクライマーのスティーブハウスもその方法を取り入れているようです。いわ
ば、時代の最先端の使用法と言えるでしょう。
この服装のポイントは、薄手のソフトシェルと薄手のハードシェルが世の中に広まってきたことによるものです。そういう
意味からも最先端の方法でしょう。
|
ジャケット、オーバーズボンの形、特にフードの形は重要
ジャケット、アウター素材について上で書きましたが、もっと重要なのはその形で、その中で最も重要なの
がフードの形です。
フードは雪が降った時に頭が濡れないようにするという目的のためだけにあるのではありません。雪山の
場合、風よけとしての機能の方がもっと重要です。
フードをかぶった時、横から見て顔が露出するようなモノでは役者不足です。これは重要で、顔に凍傷が
できるか否かはこのフードの形で決まります。
よく小さなフードの人が目出し帽で代用しようとしますが、それは不可能です。
なぜなら目出し帽の機能は保温性であり、防風性ではないからです。風速10メートル、気温−20度とい
う八ヶ岳ではよくある条件の中では顔が凍傷になることは間違い有りません。
また、ヘルメットをかぶった上から被せられるようなフードでなければ、いざというときに、あるいはステップ
アップした時に更に役不足となります。
「役不足」となるフードは、えりの部分にしまうことのできるタイプのジャケットによく見られます。えりに収納
できるということは、その程度、つまり小さいモノである証拠です。また、仮にそれが大きいモノであったとし
ても、フードの取り付け位置が、アゴよりも後になってしまい、鼻からアゴにかけてが露出する原因になりま
す。
そもそもフードは行動中は、何時でもすぐにかぶれるように出しておかなければなりません。フードが仕舞
えることのメリットは全くないと言って良いでしょう。何とかそのメリットを探し出すとすれば、そう言う機能を
持たせておけば、知らない人が買ってくれる位のモノです。使う側にはまったく役に立ちません。
フード以外の形状で重要なのが、手の上げやすさ、足の上げやすさです。手の上げやすさは適切なサイ
ズを選んだ状態で、手を上げても裾が上に持ち上がらないモノを選ぶ必要があります。足揚げの場合は、膝
が引っ掛からないモノを選ぶことが重要です。
以下に、伸縮性素材を使っていても、このような動きやすさを出すための立体裁断が施されていなけれ
ば、登山中に不快なおもいをするでしょう。
インナー(下着)について
下着は重要な装備です。
化繊でもウールでも良いのですが、体にフィットしているとその保温性や吸湿・透湿性を発揮しやすくなり
ます。
パタゴニアの場合、様々な製品が発売されていますが、少し高くなってしまいますが、メリノウールはお勧
めです。
ウールでメッシュ構造のため、肌には線で触れているため冷たさを感じにくく、べたつきも感じません。ウー
ルなので汗をかいても保温性が高く、メッシュなので濡れ過ぎによる冷えも感じません。
これまでにない高性能な冬山用の下着としてお勧めです。
冬用手袋について
手袋だけは満足するものは見つからないのが現状です。
保温性、フィット感、柔軟性、扱いやすさ(細かい作業のしやすさ)、耐久性。これら五つの性能全て満足さ
せるものは無いのが実情です。必ず何処か妥協しないと見つからないと言えます。
しかし、それらを高い次元で妥協させている製品もあり、探す作業は根気が必要です。
手袋の種類
雪山用の手袋というと、フリース、毛の手袋の上にオーバーグローブをして登るというのが一般的な時代
がありました。その方が濡れた時に乾かしやすいとか、値段が安くすむというのが選んでいた理由だったと
思います。また、岩や難しい箇所が出てきた時、オーバーグローブを外してインナーで登るということをする
のにはとても便利でした。
しかし、最近のグローブはそういった組み合わせよりも、遥かに快適で扱いやすいモノが出ています。それ
らを選ぶ方が合理的で、間違いがないでしょう。
そしてそれらはシングルグローブとダブルグローブがあります。
前者は保温材がグローブの中に組み込まれていて、取り外しができないモノです。
後者は保温材が取り外せるモノです。これは前述のインナー+オーバーグローブの組み合わせと似てい
ますが、メーカーの方でシステムとして考えられているので、フィット感が圧倒的に優れています。
また、先述のオーバーグローブ+フリース、毛の手袋の組み合わせは、登りやすさよりも、湿雪による濡
れや寒さ対策としては優れているので、状況によっては必要と思われます。
どのグローブが良いというのではなく、その登山の状況にあわせて使い分けていくことが重要です。
登攀時はシステムグローブ、稜線に出てからや予備として組み合わせのグローブを使い分けることも必要
でしょう。
<手袋の扱いやすさはどの程度必要か>
初めて冬用の手袋をした人はきっと愕然とするはずです。
「こんなのしてたら、何もできない」
しかし、冬山では手袋をしたまま何でもしないといけないのです。寒さを我慢すれば手袋を外しても良いですが、平均−
20℃、体感−30℃、酷い時には−35℃、体感−50℃という世界が冬山です。手袋を外せば、それ相応の危険を伴う
と思ってください。
手袋をしたまま、一体どの程度の作業ができるのでしょうか。
慣れが必要ですが、久野は手袋をしたまま靴ひもを結ぶことができます。当然、そこそこの岩も登れるし、ロープ操作は
自在です。
一般レベルで言えば、少なくともアイゼンは稜線を歩く手袋(オーバーグローブ)で付けたり外したりできなければなりま
せん。そうでなければ、稜線でアイゼンが外れた時、付けないといけない時にとても危険になります。
それらができるグローブを探し、練習をすることでそれが可能になります。
実際の状況を考えると、ミトンや3本指は使いにくい、むしろ不可
・アイゼンの装着
インナーグローブで行うのは不可です。雪が付くと濡れに繋がり、凍傷の原因となります。
必ずオーバーグローブを付けた状態で行う必要があります。
・ザックからモノを出したり、ポケットに入っている行動食を食べる
稜線など寒い時に、素手になることはできないですし、風を通すインナーグローブでも危険です。
オーバーグローブをしたままでも食べやすいように、行動食を工夫したり、パッキングして対処しましょう。
オーバーグローブを腕にぶら下げるためのヒモは不要、NG
オーバーグローブは基本的には外さないものであり、外したらザック、もしくはポケットに入れるなどして、風でとばされ
たり、中に雪が入らないようにすることが基本です。間違っても地面やザックの上に置いてはいけません。
そう考えると腕にぶら下げていれば良さそうですが、ぶら下げていれば、降雪時には雪が入り込みますし、ぶら下げた
ままでいれば、斜面は地面の雪をすくってしまうかもしれません。
また、ヒモが付いているとそれが邪魔になって、グローブをしっかりと手、そして腕にはめることができなくなります。
|
良い手袋 こんな手袋合ったらいいなという話
@ダブルグローブで、インナーにウールを使用。アウターは薄く、細く、伸縮素材で握りやすい。
A手のひら部分は滑りにくく、耐久性がある素材を使っているが、保湿しない。
B乾きやすい
こんなグローブがあったら絶対「買い」ですが、そんなグローブはないのが現状です。
@は解りやすいと思います。
Aは各社いろいろと工夫しています。あるメーカーは皮を使用して滑りにくくしていたり、ケブラーを使用し
て耐久性を出したり。更にゴムを使用して、保湿しないようにしていたりします。保湿してしまうと、凍りやすく
なり、保温性、操作性はがた落ちです。
つまり、それぞれ一長一短であり、全てを満たすモノは今のところ存在しないようです。
皮は滑りにくいですが、耐久性がなく保湿しやすい素材です。
ケブラーは耐久性もあり、保湿しにくいのですが、滑りやすく、しなやかでないという点で操作性が悪くなり
ます。
ゴムは操作性、保湿しにくさではよいのですが、ロープを使うと、ほとんど一瞬で駄目になる耐久性です。
以上のメリット・デメリットを理解した上で使いこなすわけですが、八ヶ岳などの短期の山行では皮。長期
の山行やハードなクライミングではケブラーを使用するのが良いかもしれません。
また、それぞれの短所を補う工夫として、アックスのグリップを滑りにくい素材にしたり、キーロックで操作
性の良いカラビナを使用したり、あるいはメンテナンスをしっかりとすることが必要でしょう。
ケブラー素材で、伸縮性が抜群なオーバーグローブか、皮のグローブでその皮が耐久性があり、保湿しな
いものが有ればそれがベストな気がします。
手袋のレイヤリング
僕らは指の冷え対策として、手袋にもレイヤリングの考えを取り入れています。
薄手のミトンや3本指のオーバーグローブを、通常のオーバーグローブの上にすることがあります。
これは稜線で風が強く、指が冷えやすい時や、確保中に身体が冷えて、指が冷えてくる時に有効です。
必須装備ではありませんが、どうしても指が冷えてしまう方は、いざというときのためにこの様な薄手のグ
ローブを持っておくのは有効です。
|