山岳ガイド ミキヤツ登山教室が紹介する、現場からの登山装備、技術論  

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山岳ガイド・ミキヤツ登山教室 久野弘龍・加藤美樹
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  アイスクライミング上達法

 ポイントはアイゼンワークと手足のバランス

 アイスクライミングに限らず、ただ歩くだけの雪山であっても岩登りであっても、アイゼンを履いている時のポイ ントは重心移動です。
 「重心移動?」なのですが、つまり、右足でしっかり立たないと、左足は動かせないということです。当然逆も 同じです。
 アイゼンを付ける理由は、雪の上や氷の上で滑らないようにするためです。アイスクライミングの場合、前爪を 蹴りこんで、それにしっかりと立ちこむためとも言えるでしょう。

 アイゼンの爪でしっかりと立つために重要なのは、アックスを打ち込む場所と足で立つ場所のバランスです。
 基本的には右手のアックスを打ち込んだらその真下に左足を持ってくるような登りを心がけるとうまくいきま す。

 また、アイゼンを蹴りこむ時にはしっかりと腕を伸ばし、腰を落とすように体を「くの字」にして蹴りこみます。そ うすると、前爪がしっかりと上を向き、ちょうど尖った部分が氷にあたるために、氷を壊すことなく蹴りこむことが できます。
 しっかりとアイゼンの爪が決まったら、そこから立ち込みに移ります。間違っても立ち込みながら、つまり腕を 曲げながら蹴りこんではいけません。

 アイゼンは蹴りこむべし そしていつか強く蹴りこまなくても良いようになりましょう


 アイゼンが氷に有効なのは、前爪で氷を蹴りこむことで穴を開け、それに爪を引っかけているためです。このと き、縦爪アイゼンは前爪の軌道と前爪の向き(縦方向)が一緒なので、氷を壊すことなく穴を開けることが出来 ます。更に穴に爪を引っかけて加重すれば、どんどん食い込んでいって外れにくくなります。
 平爪の場合は蹴りこむ時につま先を上げ気味にしないと、前爪の平たい面(上)で氷をたたいてしまうため氷 を壊してしまったり、上手く穴を開けられなかったりします。
 平爪にしても、縦爪にしても蹴ることで穴を開けて加重するのは一緒です。

 ではどのように上達させるか。
 練習第一!
 有名どころのバーチカル(垂直)な氷を登るより、70度から80度ほどの余り人の登っていないような氷で、ア イゼンワークを意識して登るのが最も早い道です。自分のアイゼンでしっかりと蹴りこむようなクライミングが必 要です。
 まずしっかりと蹴ることが重要ですが、蹴りすぎには要注意です。力一杯蹴らずとも足は手よりもはるかに力 があるので、意識して力をセーブしないと氷を壊してしまいます。
 穴を開け、そっとその穴に爪を引っかけて加重してみて下さい。きっと上手くいきます。
 また、蹴りこむ場所も大事です。少しでも窪みになっているところや、少しでもふくらんだ上の部分(ふくらんだ 部分の頂点でなくそれに乗るように)、を狙うのが有効です。そうすれば、ちょっと大げさですが、ミクロの単位で 足(アイゼン)の部分の傾斜を落とすことが出来ますし、爪を蹴りこんだ部分の氷も安定しています。
 
 アイゼンは軽く蹴って氷に穴を開ける。その穴にアイゼンの爪を引っかけて加重し、重心移動を行うことで、上 や左右に動くのです。これが重要です。



 アイスバイル(アックス)は打ち込むべし そしていつかは強く打ち込まなくても良いようにしよう

 最近のアイスバイルはとても良くできていて、上手く使えば氷に打ち込むことなく登ることが出来ます。しか し、本当に上手くなるにはしっかりと氷に打ち込むことから始めなくてはなりません。

 最近のアイスバイルは氷に引っかかった状態で荷重をかけると、どんどん氷に食い込んでいきます。これを利 用して、ただ引っ掛けるだけのクライミング技術、フッキングを多用する人が多くなってきました。
 しかし、これが通用するのは穴の空いた氷や凸凹した氷のみです。滑らかな氷や人が登った跡の無い氷で は通用しません。また、本当に強くは打ち込んではいけないようなデリケートな氷、例えばつららの集合体で は、逆に軽く打ち込んでやる必要があります。

 確かにフッキングで登るのは力を使わないですし、見ていても格好良く見えます。しかし、いつもフッキングに 頼って登っていては「振り」をコントロールする技術が身に付きません。ピック(刃)の先端、5oとか1pを食い 込ませて登るようなデリケートなクライミングはフッキングでは出来ませんし、技術も身に付きません。

 では、どのようにして上達すべきか。
 まず、バイルを振る時には、力強さよりもスピードを意識してください。野球が好きな方ならわかりますが、ヘッ ドスピードを速くすることが必要です。

 ヘッドスピードを速くするために、更にアイスバイルを振る時の軌道を正しくするためには、最初のうちは大きく 振る必要があるでしょう。そして、そのために氷を破壊してしまうこともあるでしょう。でもそれで良いのです。

 ここで矛盾を承知で言うのですが、アイスバイルを振る行為は、氷に自分で穴を開けて、それにフッキングす るということです。氷にアイスバイルを刺すのではありません。自分で穴を開ける行為を練習せずに、空いてい る穴や自然の窪み、膨らみにアイスバイルを引っ掛けてばかりいると、いつか登れない氷が出てきます。

 「自分でアイスバイルを振って、氷に穴を開け、それにフッキングする」そんな意識を持って下さい。自分で開 ける穴は大きい方が安心できるでしょう。しかし、慣れてくると、その穴は小さくとも大丈夫なことに気づくはずで す。あるいは、意識して小さくしていく必要があります。
 そのような意識を持つと、自ずとアイスバイルの振りは軽く、コンパクトになってくるはずです。腕全体を使って 振っていたものが、手首だけで振るようになるでしょう。しかし、ヘッドスピードは変わらないはずです。
 アイスバイルはしっかりと振って、氷に穴を開ける。更にそれにピックを引っ掛けて登る。これがアイスクライミ ングです。

 

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