靴下について
靴下というと、とても地味で、実際に選ぶ時にはほとんど注意を払わないと思います。しかし、本当
は靴と同じぐらい重要な装備です。登山中に起こるアクシデントで最も多い「靴擦れ」は靴下が大き
な原因となっています。
また、そうでなかったとしても、靴の性能、保温性、フィット感を補えるのは靴下(インナーソール
も)しかありません。その登山が快適に行えるか否か、あなたの靴下選びにかかっています。
靴下選び
登山靴の説明で靴下は一枚で使用することを書きました。靴の保温性がよいから一枚で大丈夫というわ
けではなく、一枚で大丈夫なような靴下を選ぶ必要があるということです。
また、靴下の厚み以上に重要なのが、靴下の形です。靴は試し履きしますが、靴下もできると良いのです
が…。
靴下をはいてみて、指先や足の裏にだぶつきがあると、靴を履いての行動中にそこが丸まって、血行を妨
げることになります。そしてそれが足のしびれや冷えにつながります。そのままにしておくと凍傷の原因にも
なりかねません。
靴下の素材
登山中に綿素材の靴下を使う方はいないと思いますが、ウールと化繊は使い分ける必要があります。
靴擦れができやすい方はウールよりも化繊がお勧めです。
化繊の方が靴の中で滑りやすいため、靴擦れができやすい方や靴ではこちらの方がお勧めです。
靴擦れの問題が無い場合、ウールを選べば臭いの問題はかなり解決します。
靴下は消耗品です。
靴下を何回か使うと、ゴワゴワしてきます。当然保温力も落ちますし、何より、フィット感がなくなって、先述
したようなだぶつきとなって、血行を妨げるようになります。
ゴワゴワするのは、皮脂のせいで、しっかりと洗っていても必ず硬くなります。柔軟性がなくなったと感じた
ら、代えたほうがよいでしょう。
インソール
登山靴に付属しているインソールはオマケ程度ものものあれば、かなりしっかりとしているものもあります
が、やはり交換した方が快適性も靴の性能も向上させることが出来ます。
しかし、登山で使うインソール選びは注意が必要です。
インソールには硬めのもので靴の性能を引き出すものと、柔らかめのもので快適性の向上を狙ったものと
があります。
登山道具に関しては、その登山者のレベルを問わず高性能なものを選ぶのが良いのですが、インソール
に関しては高性能なものが逆効果になる事もあります。
インソールの性能を上げようと思えば、オーダーメイドで足に合ったものを作ることが最も良いのですが、
登山中には足にフィットし過ぎていると、それが快適性を損なうことにもつながります。
登山は他のスポーツと違い、行動が長時間になります。
このため、靴の履きはじめと終わりでは、むくみなどによって足の形が変わっていることが多く、足裏のア
ーチをインソールで作る行為自体が苦痛になってしまいます。
また、インソールによる矯正によって、足のアーチによってショックを吸収するには、やはり行動が長すぎ
て疲れてしまい、効果を発揮させることができません。
登山中はできれば、高性能な硬めのインソールを使うよりも、快適性を狙った柔らかめで、その矯正具合
も少し緩やかなモノが適しています。
もし、あなたがインソールによる強度の矯正が必要であれば、普段の生活から正しい立ち位置、姿勢を保
つことで、強度の矯正を必要としない歩き方を身に付ける方が効果が高いと思います。
小物類
小物と書くと、大事な道具のような気がしませんが、上手く使うと、とても快適な登山を行うことが
できます。
目出し帽 バラクラバ
目出し帽は冬山の必携装備です。なのにこれまでその説明はお座なりなモノで、選ぶ方もあまり注意を払
ってきませんでした。
今回は、そんな日陰者にスポットライトを当ててみましょう。
服装の項で、暖かさはそれ程気にしなくてもよいと言いました。
実際、行動中は服の中は暖かくなりますが、肌の露出した部分はまったく別です。
肌の露出する部分といえば顔ですが、これを覆ってくれるのが目出し帽というわけです。
ただし目出し帽に防風性は無く、保温性が目的であることは頭に入れておかないと行けません。目出し帽
に防風性を期待して使用すると、必ずと言っていいほど顔が凍傷になります。
目出し帽の選択の失敗例といえば、真っ先に厚手のモノを選んでしまうことがあげられます。寒いからとい
って厚手のモノを選ぶと必ず後で買い換えることになります。
厚手のモノは、文字通り熱くなりすぎることが多く、薄手のモノでも十分です。そもそも、顔はかなり血液の
集まる場所で、多少冷えても問題ありません。風の強い時はジャケットのフードを被り、風が顔に当たらない
ようにして行動するため、目出し帽は厚くなくても良いとも言えるでしょう。
厚手のモノはヘルメットをかぶる時にとても不都合であることも頭に入れておいてください。
目出し帽の形ですが、目の部分にただの楕円形の穴が空いているモノは×。お勧めしません。それより
も、顔の部分が上と下の布で被せてあり、必要に応じて閉じたり開いたりできるモノが○で、お勧めです。各
メーカー「バラクラバ」という商品名で売っていることが多いようです。
<目出し帽の使用法>
目出し帽というと、銀行強盗のように?目だけ出して使うと思いがちですが、実際にはそういう状況で使うのは希です。
かぶったら、顔全部を出して使用する方が圧倒的に多いのです。ただ、天気が悪い時のみ目、あるいは鼻まで出して行
動します。
目出し帽を鼻までかけて使うと、息が鼻との隙間からあがることになり、眼鏡、サングラスをしている人は曇ってしまい
ます。そんな時は息を下向きに吐くようにすると少しはレンズの曇りを防ぐことが出来ます。しかし、それとてまったく全て
を防ぐことが出来るわけではないので、眼鏡ではなくコンタクトレンズを使用すると良いでしょう。
しかし、全ての人がコンタクトレンズを使用できるわけではないので、他の方法を。
前述のしっかりとしたフードを持ったジャケットなら、かなりそれらを防ぐことが出来ます。また、後述するファン付きのゴ
ーグルを使用すれば、まず曇り知らずで行動できるでしょう。久野は去年はこの方法でまったくコンタクトレンズは使用し
ませんでした。
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ゴーグル
ゴーグルは必ず必要というわけではないのですが、失敗する人が多いのでこれも紹介します。
ゴーグル選びを失敗する人は少ないのですが、使用法を間違えてまったく役に立たずに終わってしまう方
が多いのです。
基本的にはゴーグルは登りでは使用せず、下山の為に温存しておいてください。
登りでは汗をかいてすぐにゴーグルが曇ってしまうので、使ってはいけません。厳冬期にゴーグルが曇る
とそれはレンズが凍るという事で、完全に乾かさない限りその日は使い物にならなくなります。
もし登りでもゴーグルを使いたいと感じたのであれば、それは下山した方が賢明です。なぜなら登りよりも
下りの方が風の影響を大きく受けるからです。
山で荒れると、風は下から上に吹き上げてきます。登りでゴーグルが必要な天候であれば、気象条件が
同じでも下山時はもっとひどい状況になるはずです。
眼鏡をしている人にはファン付きのゴーグルをお勧めします。そして、このファン付きであっても、登りで
はすぐに曇ってしまいます。下り専用と割り切ってください。
ゴーグルはスキー用で構いません。
<ゴーグルはサングラス代わりにしない方が良い。なぜなら失敗に繋がりやすいから>
ゴーグルをサングラス代わりに使う人がいますが、お勧めできません。
登山は今回の成功が、次への失敗へ繋がる経験となりがちです。トラブルにならなかったミスも、登頂して下山できて
しまえばそれは成功体験となり、ミスが目立たなくなってしまいます。
「ゴーグルをサングラス代わりにして登りで使っても曇らなかった」という経験が、次の登山で通用するとは限りません。
それは厳冬期であってもたまたま気温が高かったのでしょう。−15度程度であれば高い気温です。
しかし次の登山が−20度以下であったら「前回の成功」が通用するとは限りません。
常にゴーグルとサングラスを使い分けていたほうが、失敗しにくいと思います。
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サングラス
サングラスですが、雪山では必携です。
紫外線は予想以上に強く、雪目になります。
雪目をなめてはいけません。
まったく目を開けられなくなるので、完全に行動不能になります。救助されない限り、その場を動くことすら
出来ません。
サングラスは肌に沿っていて、フレームが肌とは接しないモノがよいでしょう。
いわゆるスポーツグラスですが、似合う、似合わないではないので、派手であってもそれらを選んでくださ
い。
天気の悪い時でもサングラスをしていないといけない場合があるのが、雪山登山の凄さです。直に風雪を
受けるとすぐに視界を妨げられます。上述したとおり、風雪を受けないためにも、しっかりとした作りのフード
を持ったジャケットと組み合わせる必要があります。
サングラスは常時(日常でも)使う事を考えて、思いきって少し高めでも良いのではないでしょうか。驚くほ
ど使い勝手が良くなります。
オススメ
ルディープロジェクト
ちょっと高いですが、他のメーカー(日本製も含めて)よりも日本人にあわせやすく、レンズも秀逸。
impactXレンズは弾丸が当たっても割れません。フレームは他のメーカより圧倒的に調整範囲も広いので
オススメです。
ルディープロジェクトは日本では余り知られていませんが、有名人、有名メーカーに惑わされないで!
ヘッドランプ
ヘッドランプというと、軽くて明るければ何でもよいような気がしますが、選択を間違えると、とんでもないこ
とになる可能性のある道具です。
最近のヘッドランプはLEDが主流でそのタイプも色々ありますが、広範囲を照らすだけの簡易的なものよ
りも、光を絞って遠くまで照らせるレンズを持ったものをお勧めします。
最近はレッドランプ付きのモノがありますが、これもおススメです。
レッドランプは寝ている人に光が当たっても眩しさを感じにくいため、山小屋やテント内で人が寝ている時
に使用するものです。
人が寝ている時には積極的にレッドランプを使用しましょう。
また、ザックに閉まっている間にスイッチが入ってしまうことがあるので、ロックができるモノを選ぶと良い
でしょう。
電池は山行ごとに新品にする必要はありませんが、早朝出発や夜間出発を計画している時はできる限り新品のモノを入
れておいた方が無難です。
ヘッドランプ使用中に電池を交換することは不可能です。
暗いからヘッドランプをしている最中に、電池が切れたら真っ暗!そんな状況で電池交換は無理です。
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